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KAGEROU
愛媛LETS評価

第5回ポプラ社小説大賞に選ばれた『KAGEROU』。
かなりテレビでも取り上げられ、出版前から話題になった作品ですね。
大賞をとったということ、俳優「水嶋ヒロ」が本名「齋藤智裕」で
出版したものであるということなど、話題性があり大いに期待されていた分、賛否両論の評価が飛び交っているようです。
今回はその『KAGEROU』を紹介します。

■『KAGEROU』あらすじ 廃墟と化したデパートの屋上遊園地のフェンス。
「かげろう」のような己の人生を閉じようとする、絶望を抱えた男。
そこに突如現れた不気味に冷笑する黒服の男。
命の十字路で二人は、ある契約を交わす。
肉体と魂を分かつものとは何か?
人を人たらしめているものは何か?
深い苦悩を抱え、主人公は終末の場所へと向かう。
そこで、彼はひとつの儚き「命」と出逢い、
かつて抱いたことのない愛することの切なさを知る。

内容は単純に面白かったと思います。
「命」がテーマであるということだったので、
重い内容を想像していたのですが 、軽いタッチで書かれており、
さらっと読めてしまいます。
確かに、よくできた小説や良質の文学を求める読者には物足りないでしょうが、普段文学小説などに関心を示さず、現代語の教科書でさえ読むことに苦労している愛媛LETSの何人かの生徒には、取り掛かりやすい本ではないかと。
240ページと薄く、文字組も38文字14行と教科書のようにぎゅうぎゅうでは
ないので、読みやすいと思います。 

私が個人的に印象に残った箇所は…

『生きたくても生きられない人のことを考えれば、
命を粗末にする行為はできないはずだ』とおっしゃる方がいますが、
私は正直心の中で『それは違う』と思ってしまいます。
私は大東さんにはなれないし、大東さんも私にはなれないのと一緒で、
生きたい人に死にたい人の気持ちはわからないだろうし、
死にたい人に『とにかく生きろ』だとか、
さきほど大東さんがおっしゃったように
『生きてりゃきっといいことがある』と言える方の気持ちは理解しがたいはずです。
『世界にはご飯が食べたくても食べられない人が大勢いる。
その人たちのことを思えば食べたくないなんて贅沢なこと言えないはずだ』
と親が子供を諭す場面と同じように」

という部分です。
ちょうど、中学生から似たような相談がメールで届いており、
私なりにその子への接し方などを深く考えさせられた文章でした。

この本の小説としての内容は賛否両論ですが、この作品は、「水嶋ヒロ」ファンの、今までハードカバーの小説に関心などなかったであろう若者たちも手に取ることでしょう。そして、その中には、小説の面白さを知る人が何人かはいるはずです。活字離れしていく生徒に活字に触れる機会を持ってもらうために試行錯誤していますが、「水嶋ヒロ」が書いた本ということがきっかけで、これがスタートになる生徒がいるといいな、そう思う正月明けです。

著 者 齋藤智裕
定 価 1470円
ページ数 236ページ
出版社 ポプラ社
発売日 2010.12.15
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